家族にならない

0
6

「おかえり」

私は、異端だった。

家族も私を見捨てる程に異端だった。友達もできず、子供の頃から精神科に通院していた。多量の薬は眠気をもたらし、私は学校でも家でもほぼ寝て過ごした。勿論、就職なんか出来なかった。やっと見つけたバイト先は長年通った精神科で紹介して貰った。衣食住が与えられた施設で、私はこの人に出逢った。

「ただいま」

柔らかい言葉が返ってくる。帰宅した私を笑顔で出迎える彼。ピンクの花柄の厚手の毛布を頭から被り、抱き付いてくる。

「キライキライダイキライ」
「私もダイキライ」

彼のオデコに軽くキスをすると、そのまま毛布を剥ぎ取り、ミノムシの様に床に転がる。どんなに薬を飲んでも、逆の言葉が出てくるのは治らなかった。眠気だけが増え続ける。
花柄の毛布を剥ぎ取られた彼は、ウサギ柄の毛布を羽ばたかせて私の周りを回る。

キライがスキでスキがキライ。

私は家族を作らない。
恋愛
公開:20/05/04 10:58

右左上左右右

アイコンは壬生野サルさんに描いて頂きました。ありがたや、ありがたや。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容