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こんな夢を見た。酒池肉林、金銀財宝、大豪邸。ふいに目を覚ました私は、夢が終わってしまった、などと残念がることもない。また同じように見ればいいだけだ――。

寝床に着く前に一錠、小さな薬を服して見たい夢を思い浮かべる。なるべく具体的に。するとそのときの脳波とやらが記録され、眠った私の頭の中で再生される。かくして私は望んだ夢を見る、という寸法らしい。まさに「夢の薬」。

富も、名声も、温かい家庭も薔薇色の青春も、望めば現れるのだから実際あるのと変わらない。借金も、孤独も、冷ややかな軽蔑も暗い過去も、望めば消えるのだから実際ないのと変わらない。

さて、次はどんな夢にしようか。薄い布団からのっそり、枕元の薬瓶に手を伸ばす。するとそこで、瓶は空だと気付く。はて、数十錠は入っていたはずだが。――それでは次は、瓶にいっぱいの薬が入っており、望み通りの夢が見られる夢を見るとしよう。
ファンタジー
公開:20/05/08 17:00
更新:20/05/08 15:34

本夛奈月( 東京 )

東京の大学生です。
よろしくお願いします。

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