20
11
「あら」
妻のえみ子の声に、隆は新聞から顔を上げた。
「どうした」
「シンビジュームが咲いてるのよ。もう駄目かと放ったらかしてたのに」
見ると、鉢植えの大きなシンビジュームが、黄色い花を沢山咲かせていた。いつの間に蕾をつけていたのか、全く気がつかなかった。
「綺麗だな」
「ええ」
隆たちはそれを眺めながら、朝のコーヒーを飲み、よそ行きに着替えた。ドアを開けると、外には様々な花が咲き乱れていた。チューリップ、菊、向日葵、池の小さな睡蓮。
今日、地球は太陽に飲み込まれ消滅する。それを悟ってか、或いは気温の上昇のためか、花々が冬にも関わらず狂い咲きを始めたのだ。二人は思い出の場所で、花見をしてその時を迎えると決めていた。道は吹き寄せられた桜の花弁で、淡紅色になっていた。
「人類退場の花道、って感じね」
「いいね。せめて、胸を張って歩くか」
一面の花霞は、これまでに見たどんな景色より、美しかった。
妻のえみ子の声に、隆は新聞から顔を上げた。
「どうした」
「シンビジュームが咲いてるのよ。もう駄目かと放ったらかしてたのに」
見ると、鉢植えの大きなシンビジュームが、黄色い花を沢山咲かせていた。いつの間に蕾をつけていたのか、全く気がつかなかった。
「綺麗だな」
「ええ」
隆たちはそれを眺めながら、朝のコーヒーを飲み、よそ行きに着替えた。ドアを開けると、外には様々な花が咲き乱れていた。チューリップ、菊、向日葵、池の小さな睡蓮。
今日、地球は太陽に飲み込まれ消滅する。それを悟ってか、或いは気温の上昇のためか、花々が冬にも関わらず狂い咲きを始めたのだ。二人は思い出の場所で、花見をしてその時を迎えると決めていた。道は吹き寄せられた桜の花弁で、淡紅色になっていた。
「人類退場の花道、って感じね」
「いいね。せめて、胸を張って歩くか」
一面の花霞は、これまでに見たどんな景色より、美しかった。
SF
公開:20/05/03 12:24
読んでくださりありがとうございます。
小学生の頃、「世界中の本をぜんぶ読んでしまったら退屈になるから、自分でお話を書けるようになりたいな」と思いました。
僭越ながら、子どもの頃の夢のまま、普段はショートショート作家を目指して、2000字くらいの公募に投稿しています。芽が出るといいな。
ここでは思いついたことをどんどん書いていこうと思います。
皆さまの作品とても楽しく拝読しています。毎日どなたかが更新されていて嬉しいですね。
よろしくお願いしますm(_ _)m
*2020.2〜育児のため更新や返信が遅れておりますが、そんな中でもお読みくださり、コメントくださり本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます