叫ぶ家族

我が家は４人家族。なんでも話せる間柄で友人からは今どき珍しい家族だな、と言われることが多い。管理職としての悩みや、顧客との関係作りの難しさ、思春期独特の学校での苦労や辛さなんかもわかり合えている。そんな自慢の家族だ。

「ぎゃあぷ、ぎゃああぷー」
毎晩、母の叫びは風呂から聞こえてくる。
浴室で反響した音はもはや隣家にも届いているだろう。風呂上りの母はすっきりとした顔で、トイレから聞こえる父の叫びにも耳を貸さずに、顔のパックに余念がない。
「ゔぉおおヴぉー」
父はどちらかと言えば悶絶系の叫びだ。
長すぎるそのトイレタイムに業を煮やした兄は、トイレの前の廊下で叫ぶ。
「がりばりーばりがりー」
歯軋りするような雄叫びにも父は出る気配もなく、そのまま長居を決め込む。
諦めた兄は吐き捨てるように「かりはりー」とだけ残し、自室へ戻る。
そして僕は誰もいないリビングでぼそりと叫ぶ。
「家族っていいなぁ」