天の川家族

1
8

窓には1093体のてるてる坊主がぶら下がっている。
七夕は年に一度恋人達が出会えると言うが、家族も天の川を越えてあたしに会いに来る。しかし今年も天気予報は雨だ。あたしは今日の一体を作り、窓に吊って眠りについた。

次の日は予報通り雨だった。窓で笑う能無し坊主達を鋏でバラバラにして外へ飛び出した。

あの橋に立っていた。両親、兄、ペットを一瞬で奪ったこの場所。会いたかった。あたしの頬が濡れていた。

博之が袋にてるてるの欠片を詰めて走ってきた。
「こんな事しちゃダメ」
私は袋を払いのけた。すると欠片が袋から一気に飛び出し、紙吹雪のように舞った。そして何故か欠片は雨に触れて光り出した。星が煌めくように何千もの輝く欠片で私の目の前に小さな天の川が広がった。

キャイーンと鳴き声が聞こえた。

川の向こう側で両親と犬を抱く兄。やっと博之を家族に会わせる事が出来る。あたしはちぎれるほど手を振った。
その他
公開:20/05/04 02:35
更新:20/05/31 11:24
○○家族

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容