くつ屋

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「最近明るくなったね。」
「実は、これのおかげなんだよね。」
A子は足元を指差した。
パンプスに、これといった特徴はない。
「行ってみるといいよ。」

薄暗い店内にはカウンターと椅子が用意されている。
「いらっしゃいませ。お客様はどんな『くつ』をご希望ですか?」
差し出された様々な靴の写真には、何か書かれている。
へんくつ・りくつ・きゅうくつ・へりくつ…
「どういう意味ですか?」
「お悩みの『くつ』をお選びください。ご購入された『くつ』を履きつぶす頃には、きっとよくなりますよ。」
売却済の写真を見てみる。そこに書かれた文字は「ひくつ」。
なるほど、A子はこれを買ったな。
「じゃあ、私はこれで。」
指先を見つめた店主は微笑みを浮かべる。
「最近、人気なんです。お目が高いですね。すぐ履いていかれますか?」

帰り道、自分の中のわくわくした気持ちに気付いた私は、その効用にすっかり満足した。
ファンタジー
公開:20/05/03 06:39

arupara( 東京 西部 )

田丸さんがご出演された『情熱大陸』であらためて空想の力を思い知らされ、読むだけじゃなく書いてみたくなりました。

書いた文章のイメージをイラスト化するのが最近の楽しみです。

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