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駅伝の醍醐味は襷を渡す瞬間だ。走ってきた選手は、「後は任せた!」と次走者に思いを託す。襷を受け取る側は、「よくやった!」と労いの言葉を掛ける。一瞬の出来事だが熱い言葉を掛け合う、胸の熱くなる瞬間だ。

高校二年生の僕は父・母・妹と四人で横浜市内の権太坂で暮らしている。両親は共に北海道の出身だが、箱根駅伝を愛するあまり生観戦可能なこの地にマイホームを建てたらしい。
我が家には母お手製の襷がある。刺繍で「足立家」と記されている。
小学4年生になった頃、友達の家には襷がないということを初めて知った。襷がなくてどのようにコミュニケーションをとるのだろうと、当時の僕は不思議に思ったものだ。

「今日も稼ぐのよ」母が肩から襷を外し父へ渡す。
「任せろ。夕食は頼んだ」と父が襷を持ち、妹と共に家を出る。
そしてバス停にて、「家庭科も手を抜くなよ」「会議で寝ないでね」と、父と娘が繋ぐ。
胸の熱くなる瞬間だ。
青春
公開:20/05/03 08:08
更新:20/05/05 08:48

チョルクーパー( 横浜 )

ショートショートに魅了されています。
いつか本を出すことが目標です。
宜しくお願い致します。

https://twitter.com/hatomugi69

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