１６ビートの家族

家は台風の暴風に１６ビートでたたかれている。
ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ、ズンズンチャッチャッ・・・
「この家、大丈夫やろか」
風速４０メートルの風が躊躇なく吹きつけてくる。外に出ようにも人の力では玄関の扉も開けられない風圧だ。
ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ、ズンズンチャッチャッ・・・
こんな鬼気迫る時でもお腹はすくもんだ。そろそろ夕飯の支度にとりかかった母さんのキャベツを切る音が聴こえてきた。
「なんで１６ビート？」
妹が、二階から階段を下りてくる。
「また１６ビート？」
僕が台風の状況をラジオのスイッチを入れると、１６ビートの曲が流れてきた。
ゆすの『夏色』
♫ちゅうしゃじょうのネコはあくびをしながら～(^^♪
そこへ、お父さんがギターをかかえて勝手口から帰ってきた。
「いち・に・さん・ハイ!!」
ギターに合わせて、お母さんはキャベツを切って、妹は階段を上り下りして、僕たちは歌った。