寛容植物

そこは、晴れ渡った 5 月の朝のような清々しい空気で満たされていた。
品種改良を重ねて生み出した「寛容植物」のおかげで、社内の空気が浄化されているのだ。空気清浄効果は、大手メーカーの空気清浄機が比にならないほどだ。 電気入らずで有害物質を除去、育てるのに水も必要ない。 守銭奴にもずぼらにも寛容な理想の植物である。
「ちょっと課長の横!大きな花が咲いてる。」 「さっき部長によばれてなかなか戻ってこなかったからね。気の毒だけど笑えるわー。」 ヒソヒソ話で盛り上がる 2 人の後ろで、新芽が伸びている。
寛容植物は、空気中の有害物質を吸収して育つのだ。
澄んだ空気を肺いっぱいに吸いこみながら、あらためて社内を見渡す。 鬱蒼とした様子は、まるでアマゾンだ。
「情けないなあー。」
私のため息で、また一つ花が咲いた。