影縫い家族

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 地区予選を明日に控え、俯きながら下校していると、足元に自分の影が無いことに気づいた。しまった。どこかに落としたのか。

「試合は明日だろ? 影が無いとチームに迷惑がかかるぞ」
 
 父さんに相談すると、父さんは和室に入り、母さんの裁縫道具と一枚の人影を箪笥から取り出した。

「父さんのお古だけど」

 父さんは僕の足に沿って、昔の自分の影を縫い始めた。無骨な太い指で小さな針を摘まむ姿は、申し訳ないけど面白い。

「…これでよし」

 僕と繋がった父さんの影は、背が低いものの色が濃く、存在感に溢れていた。ありがとうを口にできず、僕は言った。

「太ってたんだね」
「うるさい。さあ、母さんにご飯を運ばないと」

 父さんが仏壇を一瞥して立ち上がると、足元から伸びる母さんの影が目に止まった。畳に映る細長い指に触れると、母さんは握り返してくれた。

 しかし、指に伝わるのは畳の感触だけだった。
青春
公開:20/05/02 13:33
更新:20/05/04 15:02
○○家族

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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