彼女をしまう

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僕の部屋のクローゼットの一番奥に、彼女を隠している。
あれから何年経ったのか、僕のお姫様だった人は、今や暗い大きな箱の中。
あんなに大好きだったのに。
彼女がいてくれるだけで、僕はただそれだけで幸せだったのに。
生まれて初めて好きになった人だ。
それなのに僕は僅か数年で別の人を好きになってしまって、大好きだった彼女の顔を見たいと思わなくなってしまった。
酷い話だと思う。
彼女がいたから行きたくない仕事にも真面目に行った。彼女にはすごくお金がかかったから。
僕も少し無理をしすぎたのかもしれない。
あの日、僕のこの部屋の中で。
あちこちに散らばる彼女を、虚無感と後ろめたさに苛まれながら箱に詰めたんだったっけな。
今日僕は、何年かぶりにこうして彼女の入った箱を見ている。
二人目のお姫様を詰めた箱を、一緒にしまう為。
「推しが変わるって言うのは、ほんと何とも言えない気分だなあ」
グッズが山程ある。
ミステリー・推理
公開:20/05/01 17:46

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