Never forget your kindness

企業の面接試験。
第一志望の企業で、気合い十分。
でも、かなりの緊張もしていた。
面接官は１人。４０代くらいの男性。
厳しい質問を浴びせてくるわけではなかったので、僕はなんとか答えることができていた。
「以上で面接は終わります」
面接官のこの一言に内心ホッとした。だが、
「あ、もう一つだけ」
そう言われ、ハッとした。
「私の名前覚えていますか？」
そう聞かれたのだ。
部屋に入ってすぐに名前を言っていたのは覚えていたが、僕は面接官の名前を思い出せず、嫌な間が空いた。
「も、申し訳ございません。覚えていません・・・」
僕は正直に言った。
「そうですか。分かりました。以上で面接を終わります。忘れ物がないようお帰り下さい」
面接官は淡々と話した。
部屋を出て、「終わった・・・」と思った。





それでも今。
定年退職の日を迎えたその人に、花束を渡すアラフォーの僕がいる。
感謝の涙を流しながら。