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ある休日。ぼんやりスマホを眺めていて、ある広告が目に止まった。
「…記憶が抜け落ちていること、ありませんか?」
そういえば最近やたら物忘れがひどいなぁ、と思い始めていた僕は、興味半分でその広告をクリックした。
数日後。
「…ってことがあったんですよ」
女子社員が、自販機前で雑談をしている。缶コーヒーを買おうと近寄ると、一人が僕を手招きした。
「井上先輩、いいところに」
そう言うと、昨日あった事を話し始めた。ところが、全く記憶がない。
まずい。
僕は電話に出るフリをして自販機の影に隠れ、ポケットから先日届いたカツラを取り出し装着すると、何食わぬ顔で話の輪に戻った。
「それで?」
「だから、先輩がほら」
ああ、なるほど。僕の中で記憶が蘇る。確か、打ち明け話をして。
「うん、本当だよ」
しん、と水を打ったように静かになる。輪の中の一人が、恐る恐る呟いた。
「先輩、本当にヅラなんですか?」
「…記憶が抜け落ちていること、ありませんか?」
そういえば最近やたら物忘れがひどいなぁ、と思い始めていた僕は、興味半分でその広告をクリックした。
数日後。
「…ってことがあったんですよ」
女子社員が、自販機前で雑談をしている。缶コーヒーを買おうと近寄ると、一人が僕を手招きした。
「井上先輩、いいところに」
そう言うと、昨日あった事を話し始めた。ところが、全く記憶がない。
まずい。
僕は電話に出るフリをして自販機の影に隠れ、ポケットから先日届いたカツラを取り出し装着すると、何食わぬ顔で話の輪に戻った。
「それで?」
「だから、先輩がほら」
ああ、なるほど。僕の中で記憶が蘇る。確か、打ち明け話をして。
「うん、本当だよ」
しん、と水を打ったように静かになる。輪の中の一人が、恐る恐る呟いた。
「先輩、本当にヅラなんですか?」
その他
公開:20/05/01 20:55
簓井 陸(ささらい りく)
気まぐれに文字を書いています。
ファンタジックな文章が好き。
400字の世界を旅したい、そういう人間の形をしたなにかです。
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