オンライン家族

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 オンライン帰省といわれても、ホームの母はケータイを所持していない。母さんごめん、会えないね。と、ホームから朗報。「ご入居様用のPCを設置いたしました。」
 画面の母は、いつも通りだ。繰り返し私に「父さん今日は帰ってくるよ。」とほほ笑む。私は一言「うん。」父は私が五つの時、出勤したきり帰らなかった。散々探したけれど見つからない。50年。生きてるのかなぁ。
 その時、画面に「家族検索キーワード入力」の文字が現れた。え、なに?興味半分に父の情報を入力。すると「思い出は?」の文字。私は慌ててたった一つの思い出「父の本に落書き」と入力。
 数十秒たっただろうか。PCはピポンと鳴って画面が3分割に。母のしっかりした明るい声が聞こえる。「お帰りなさい。」え、まさか。車いすの老人は誰?私はうろたえる。でも見つけたよ。老人の手に持つ本の表紙に、父さんの顔。私の落書きだ。母さん、家族そろったね。やっとだね。
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公開:20/05/04 01:00
更新:20/05/03 15:22

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