俺の左手に自我が宿った

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俺の左手に自我が宿った。
俺は右利きの作家で、いつも右手で物語を紡いでいた。
そんなある日、左手が突然動いて原稿用紙の端にこう書いた。「オレの方が面白い話を書ける」と。
試しに左手の思うままに筆を走らせてみた。こいつはさっと1作を書きあげ、読んでみると結構面白かった。
作家の左手という奇妙な肩書きで、あっという間にこいつは人気になった。
けれど嫉妬という感情を人間は持っているわけで、俺はある夜、折れてもいない左手にギプスをぐるぐると巻いた。
これで左手はペンを持てない。優越感に浸りながらそっと瞼を閉じた。

翌日、右手の痛みで目が覚めた。
ギプスを巻いたのは左手なのに、そう思い右手の方を見た。
「──あぁぁぁぁ!?」
右手が骨折していた。動こうとするが激痛で助けすら呼べない状態だった。痛みで朦朧とする視界の中、原稿用紙の端に書いてある言葉を見つけ、俺は息を飲んだ。
「オレに刃向かうな」
ホラー
公開:20/05/02 03:35

もちもち大豆

もちもち大豆です。よろしくお願いします。細々と書いていけたらいいな。

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