飛び降り女と紳士

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「誰か、美代子を助けて下さい!」
 雨の降るビルの屋上で、男の悲痛な声がこだました。
「何よ私を捨てたくせに! もう死んでやる!」
 女はヒステリックに叫んだ。駆けつけた警官もその気迫を前に一歩も近づけない。
 そこへ一人の紳士が現れた。彼はジャケットを投げ捨てると、フェンスを乗り越えて女に歩み寄り、さっと傘を差した。
「な、何よ。私を慰めるつもり?」
「死にたい気持ちが足りない!」
 女をどんと突き落とす。
「きゃ!」
 すぐさま紳士も飛び降り女の手を掴んだ。
「嘘…!」
 女が見上げると、紳士の持つ傘はパラシュートとなっていた。着地の衝撃は凄まじかったが、体に怪我はない。
(私、まだ生きてる!)
「も、もう!ホントに死ぬかと思ったじゃない!」
「まだまだああ!!」
 紳士は女を肩に担いで走り出した。
「え、な、何?」
「次はナイアガラに行くぞおおお!!!」
「いやああああああああ!!」
その他
公開:20/04/30 23:57
更新:20/04/30 23:59
例の紳士シリーズ

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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