イチゴ味のアイスクリーム

イチゴ味のアイスクリーム。
世界で大ベストセラーとなった推理小説の題名だ。
頭脳明晰なストロベリー伯爵が難事件を解決する痛快な物語で、決め台詞は「真相は思ったより面白くないものなのだよ」。そんな本格派の内容に対して「イチゴ味のアイスクリーム」というなんともポップな題名のギャップに多くの人は惹かれるのだった。

作者はメディア嫌いで、とうとうこの題名の由来を話すことはなかった。ファンたちは様々な考察をしたが、どれも作者からすれば的外れなものだった。ある日、孫がやってきて、作者に聞いた。

「ねえ、なんでこの小説の名前は、イチゴ味のアイスクリームなの？」

「それはね、題名に悩んでた時にたまたま食べてたのが、イチゴ味のアイスクリームだったんだ」

「へえ、真相は思ったより面白くないものなんだね」

作者は、きっとこの孫は頭脳明晰な探偵になるだろう、と周りに自慢していたという。