野暮はご遠慮願います

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「何飲む?サワー?カルアミルク?それともノンアルがいいかな」
「あ、私ジントニックで」
品書きを開きかけた男の手がぴたりと止まった。
「…そう。俺ビールね。こっちは…」
「ジントニックですね。かしこまりました」
バーテンダーが目の前を離れる間際、男がふんと鼻を鳴らすのを私は聞き逃さなかった。
「君、結構飲むんだ?」
「別にそれほど…」
男は私の答えを遮るように言葉を被せてきた。
「いや、絶対そうだよ。まあいかにも好きそうなカンジするもんな。男より強そうだよね。彼氏引いちゃうんじゃない?」
男は運ばれてきたビールをぐいっと飲んだ。
「こちらジントニックです」
私は静かにグラスに口をつけ、バーテンダーの目を見て軽く首を傾げた。彼も微かに微笑み返す。

しばらくして店を出る時、男に聞こえないようバーテンダーが私に囁いた。
「次はお一人で。その方が美味しく飲めますから」
私はにこりと笑って頷いた。
その他
公開:20/04/30 23:36
更新:20/05/01 18:57
10101298さんから 『不味い話』というお題を 頂きました 美味しいお話なら 得意なんだけど(笑)

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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