菩提山のジュウ

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ジュウと名乗る少年は、17歳で家督を継承し菩提山城主となった。彼の父は死ぬ間際、山に棲まう天狗の話をしていた。
「己の命を捨てるほどの真の願いがあるならば、お前も天狗に会うがよい」
戦乱の世を憂いていた彼は、すぐさま天狗を訪ねた。
「願いを叶える代償に寿命の半分を頂くがよいか?」
思えば彼の父も祖父も短命だった。
「かまわない。天下泰平を。私はそれを為す者の力となりたい」
天狗は静かに頷き、ジュウの寿命を半分奪った。
「神算鬼謀の智を授けよう。日輪の子の助けとなるがよい」
ジュウは菩提城に戻り考えた。残された時は少ない。命の灯が消える前に天下泰平を為さなければ。
ジュウは隣国にいる日輪の子に己の名を知らしめるため、僅かな手勢を率いて主君の城を奪ってみせた。
その日から重治はジュウと名乗るのを辞めた。
私はジュウではなく、半分のハンだ。
私の名は竹中半兵衛。
日輪の子よ、早く私に会いに来い。
その他
公開:20/04/30 23:18
更新:20/05/02 12:35
空想歴史絵巻

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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