風の便りより速く

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よ、久し振り。

なんとか言いなさいよ。ほら、今年は一緒に花火を見る約束してたでしょ。だからイタリアから戻ってきたの。

さ、一緒に行こ。
それとも、ここから見る?

そっか。じゃあ、ここでいいや。

よっこらしょと。

もうすぐ始まるかなぁ。

ここは静かだね。

私さ、日本の花火が世界一って、根拠もなく信じてたんだけど、ベネチアで見た花火も綺麗だったよ。伝統的な古い街並み、運河に並ぶ沢山のボート、水面に揺らぐ花火。

まさか私がレデントーレの花火に歓声上げてた時に、あんたが死んでるなんて思わなかった。

ホントはさ、虫が知らせてくれたの。イタリアまではるばる飛んできてくれたんだね。花火見てる時に耳元で囁かれて、すぐに飛行機に飛び乗ったのよ。

ねぇ、なんで病気のこと隠してたの?

知ってたら私、留学しなかったのに。

今度はあんたが遠くに行っちゃったね。

あっ。


花火、綺麗だね。
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公開:20/04/30 21:06

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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