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雨は放課後には上がっていた。
細い裏道を歩いていくと小さな水たまりが出来ていて、その上にキラキラしたものが浮かんでいるのが見えた。近づいて見るとそれは水色の羽の生えた小さな男の子だった。
「こんにちは」って言うとその子はわたしを横目でにらんだ。
「何か用?ボクは水たまりの妖精さ」
「まあ、妖精さんなら願い事を聞いてくれる?」
「なに言ってるのさ。ほらお日様が出て来たろ。この水たまりが干上がっちゃうと、ボクも一緒に消えちゃうんだ。人の願い事なんて聞いてられないよ」

その日からわたしは毎日その水たまりにペットボトルで水を運んだ。何年も、何十年も。
わたしは大人になって、素敵な人と結婚をして男の子が一人いる。毎日通る、舗装されていない細い道の水たまりに今日もペットボトルで水をそそぐ。なぜ自分がそんなことをしているのかは分からない。

手を引いている子の顔を見ると何かを思い出しそうになるけれど。
ファンタジー
公開:20/05/01 16:53

家韮真実(いえにら・まみ)( 兵庫県 )

もともとは漫画を描いていました。
漫画のアイデアを文字で書いているうちにショートショートも書くようになったんですよね。
名前はもちろんペンネーム。
実際にはない名字を考えました。
読みは、男の子気分の時は『いえにら・まさみ』
女の子気分の時は『いえにら・まみ』に変わります(笑)

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