追憶の家族

　ある日のこと、故郷に帰って、父の遺品を見ていた。
　私が誕生日に贈った万年筆の箱、扇風機、電気ストーブ、CDラジカセ……。すべてに◯年◯月◯日と日付けが書いてあった。親父らしいな。
　父は買った物や、貰った物に日付けを書く癖があった。
　その日、父がいた追憶の家族は、笑顔であふれていた。
　この春、東京へ嫁ぐ娘もこんなふうに、私を思い出してくれるのだろうか……。

　娘の結婚式。披露宴のスクリーンに我が家の写真が映し出された。
　娘が生まれた日、家族旅行、夏祭り、入学式、卒業式……。
　娘と寄り添い映像を眺める青年は、きっと幸せな家庭を築いてくれるだろう。
幸せになれよ。式に出てやれなくてごめんな。母さんを頼む。

　私は父の遺品整理をしていた。
　父は買ったものや貰ったものに日付けを書く癖があった。◯年◯月◯日。
　パパらしいわね。
　その日、父がいた追憶の家族は、笑顔であふれていた。