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ある雪の夜、お爺さんは山の峠を歩いていた。
山の上からヒュー、ヒューと猛吹雪がおじさんの顔に当たる。
お爺さんは冷たいのを堪え、前へ前へと進む。
ふと足元を見ると地蔵様が雪に埋もれていた。
優しいお爺さんはお地蔵様の周りを綺麗に堀り、売れ残った傘をお地蔵様に被せる事にした。

数日後、夜更けにお爺さんを呼ぶ声が外から聞こえた。
何だろうとお爺さんが扉を開けると家の目の前に大きな川が流れていた。
対岸の方を見ると昨年亡くなったお婆さんが手招きをしている。
「お~い、婆さん。今、そっちへ行くぞ。待っておれ」
お爺さんはそう叫び、対岸へ行こうとした。
だが、お爺さんの体は動かなかった。
強い力でお爺さんの服をお地蔵様が掴んでいたからだ。
「お前にはまだ早い。出直してこい」
お爺さんはお地蔵様に一本背負を喰らった。
「はっ、何だ。夢か」
お爺さんはコロナに掛かり、生死の境を彷徨っていたのだった。
公開:20/05/01 12:21

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