選ばれたい菜

青果売場の乙女達は絶賛売出し中。
―そろそろ剛くんが買い出しに来る頃ね。ヤバっ赤くなるー
―人参ジンてば元々赤いじゃん。まず、買われるのは私よ、ララン
―ネバネバの癖に調子に乗らないで、オクララ。今買うとしたら、私でしょ。
―ないない。繊維多いからって、歯間に絡むのやめなー、アスパラガスス。
―クセが強いわ、セロリリ。剛くんが買うのは使い回せて、「モモ」がつくわ・た・し。
―モモじゃねーよ、ジャガイモモ。芋のくせに成り上がってんじゃねーわ。
―みんな、実はね。私、ポップコーンの読モにスカウトされたの。冬号の撮影からデビューできるんだ。
ピキ！野菜たち、瞬間冷凍。
―誌面に必要なんだって。私みたいなパンチの効いた個性と青々とした鮮度が。心残りだけど、剛くんのことはお願いするね。

事務所のオフィスで。
―ニックネーム要るベジ。ちゃんななとか、ななきちとか。君～本名もエモいね、辛子菜々って。