足跡

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 午後9時。私は残業から解放されて、やっと自宅のアパートに帰ってきた。
 今日は一段と蒸し暑い。ネクタイを解きながらアパートの階段を登る。
 登りきって、ふと足元を見る。
 そこには足跡がついていた。昼間雨が降ったから、その時に誰かが帰ってきたんだろうと思った。水分でできた足跡は、スニーカーによるものに見える。
 私は自室の、一番奥の部屋へと向かう。
 足跡も、私の部屋の前まで続いていた。

 私は鍵を鍵穴に差し込みながら、首を捻る。私に用があったのだろうか? セールスマンかな?

 がちゃり、と鍵穴が回る。

 足跡は扉の前で気をつけをしたまま、途絶えている。
 錆び付いた音がしてドアが開くと、いつもの、真っ暗な自分の部屋。
 
「開けてくれてありがとう」
 
 突然、耳元で声がした。
 そして私は気づいた。

 そうか、ずっとそこで待ってたんだ。
ホラー
公開:20/04/29 18:00
更新:20/04/29 18:26

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