スイッチ

やっとそれを手に入れた。

毎日毎日「ママー！」と何十回も呼ばれる。

トイレにいても、お風呂にいても。

(ちょっとでいいから自分の時間が欲しい。)

子供たちの背中にスイッチをつけ電源をOFFにしてみた。
彼らの動きがぱたりとやみ、家中が静かになった。

自分だけの時間、何年ぶりだろう。
好きなテレビをみて、ゆっくりとお風呂に入った。
つかの間の幸せだった。

数時間後、再びスイッチの電源をONにしたが、子どもたちピクリとも動かない。慌てて説明書を読み返した。

【※注意事項※】
電源を切ってから3時間以内にONボタンを押さないと二度と電源が入ることはありません、ご注意ください。

スイッチの裏は毒針と解毒剤の針が一つずつ出ているだけの粗雑なものだった。

(どうしよう…。)


そこで私は目を覚ました。

「ママー！」朝から私の上に重なるように抱き着いてくる子供たちを強く抱きしめた。