流れる景色の中で

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夕暮れの空を、右に左にと、ゆっくり降りてきたのはバス停だった。

団地の敷地内にポツンと置かれた木のベンチ。私は犬の散歩の途中、そこに座っていた老人の昔話に付き合わされていた。

「おや、もうそんなかねえ」

老人は急に話すのを止めて立ち上がった。ずいぶん近づいてきたバス停の方を見れば、若い男が揺れる土台に片足を乗せていた。

支柱を掴んだ逆の手をポケットにつっこんで、地上を見下ろす若者。老人は逆に天を仰いでいたが、互いの視線は微妙にずれていて。

バス停が到着するやいなや、二人は言葉もなく場所を入れ替わった。若者はベンチに座り、老人はバス停を掴み、そしてバス停は静かに、老人もろとも地中に沈んでいった。

若者は私に気がついて、どうぞと席を譲ってくれた。私は思わずリードを手渡して、ご厚意に甘えた。遠のく若者と愛犬を見送ると、肘掛けの先端に見慣れたボタンが。

とまります。私は思わず…。
ファンタジー
公開:20/04/29 22:19

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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