迷った指

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そいつがあらわれたのは台風が直撃した日の夕方だった。
「すいません。持ち主のところへ帰る途中に道に迷ってしまい帰れなくなったので一晩だけ泊めて下さい」
どこからどう見てもそいつは右手の親指なのだが台風の中帰ってくれというのも気が引けたので泊めてやることにした。
客間からはそいつと娘が楽しいそうに話をする声が聞こえてくる。
しばらくすると左手の中指が家にやってきた。
こいつも道に迷ったので泊めてくれとお願いされたので家に入れてやった。
しばらくするといい香りがしたので台所を覗いてみると妻の料理を中指が手伝っていた。
かなり豪華な夕飯に胸を躍らせていたのだが
夕飯の前にやってきた右手の小指と左手の人差し指が私の分の夕飯を全て平らげてしまった。
怒った私が指を家から放り出そうとすると逆に妻と娘に私は放り出された。
あれから数年後、あの家には20本の指と元妻と娘と娘の赤ちゃんが暮らしているらしい。
その他
公開:20/04/29 21:54

ばるさみこ

初心者ですがコメントやアドバイス等よろしくお願いします。
 

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