弁当家族

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友人のA君は学生時代、よく学校に親を持参していた。
こういう言い方をするのには訳があるのだが……。
それはいつも昼食の時に起きた。

「こんちはー」
「やあ、こんにちは」
A君は、お父さんを教科書みたいな持ち方で持ってくる。挨拶もする。意思の疎通はできるのだ。当たり前だけれど。
ごとん。
お父さんの両足を机の上に置く。脛の部分に切り込みがあって、そこを開く。
湯気がたつ。右足の脛にはごはん、左にはおかずが詰まっている。
「きちんと温めておいたぞ」お父さんのダンディー・ヴォイス。
「ありがとう。いただきまーす」
A君はそれを当たり前みたいに食べる。美味しそうに食べる。

いつだったか、お父さんの脛からビーフストロガノフが漏れ出ていた時は、クラス全員が戦慄したものだった。
A君は今頃どうしているだろう。
大人になった今はさすがに、親の脛を齧ったりはしていないだろうけれど。
青春
公開:20/04/29 21:24

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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