髪様、お願い

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「よし、ついにGET!」
小さな箱を抱えた姉さんが居間に飛び込んできた。
「見せて見せて!」
箱の中から出てきたのは、何の変哲もないドライヤーだった。
「めちゃフツー」
「ばーか。よく見なよ」
取説を見ながら姉さんが俺の頭を叩く。
「電源…IN…OUT…」
姉さんは教科書を開くとドライヤーを向けた。
「まず内容を取り込む」
電源をINに入れると空気が吸い込まれ、ページが引き寄せられる。
「次に濡れた髪に向けてOUTで乾かす」
洗面台で濡らした髪にドライヤーを向けた途端、姉さんが驚きの声を上げた。
「やばっ、ほんとに教科書の内容が入ってくる!」
「まじ?俺も…うわ、すげえ!」
「私にもやらせて…まあ本当!」
横にいた母さんまで乱入してくる。
「よし父さんも…あちちちっ」
ドライヤーを放り出して抱えた後頭部が、蛍光灯の光に眩しく輝く。
姉さんが取説を読み上げた。
『風は必ず髪に当てて下さい』
その他
公開:20/04/29 19:23
こんなドライヤーが 本当にあればいいのに

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

【note】
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【Twitter】
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