自費出版の依頼に来たある夫婦の話

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 どんな依頼がよく来るか、ですか?
 たしかに自費出版と言いますと、売れない小説家志望が意地になって自分のお金で出版する、といったイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。ですが実際にはそういう方はむしろ少ないのですよ。
 例えば先日、五十代くらいのご夫婦が参られましてね、本を出版したいというご相談を受けたんですけれども、お二人ともどこか憔悴したご様子で、これからひとつの仕事をやり遂げようという、本作りには欠かせない覇気のようなものが、まるで感じられませんでした。ですが、お二人は固い決意をお持ちでした。実は、去年の冬に息子さんを亡くされているのです。死因は自殺なのですが、その理由は不明とのことでした。ただ彼の死を無駄にしないために夫婦で何ができるか考えて、ここを訪れたとのことです。
 なかなか気の重い仕事でしたよ、ええ。
 でも私はこの仕事がやっぱり好きですね。いい仕事だと思います。
その他
公開:20/04/28 21:05
更新:20/04/28 21:30
自費出版 ルポタージュ風に 書いてみました (すべて想像で書いています)

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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