昔の出勤簿

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昔の或る会社の出勤簿は、課毎に一人一枚で人数分の出勤管理表が束ねて紐で括られていた。1ケ月分の日付曜日が左端に縦に書かれ、日付の横欄には始業・終業時間の記入欄、更に残業の場合は何時から何時と仕事内容を書き、その横に課長の承認印が毎日押される。
出勤簿は責任者たる課長席横に置かれ、目が届き不正が無いように図られていた。
ただ課長が一番早く出社し、一番最後に帰宅する訳でもなく、残業に至っては内容を逐一把握しているとは思えず、いつのまにか形骸化した。本来は残業の内容は、某会社向け請求書、某案件起案書、某議事録作成等具体的に記載すべきが、いつの間にか単に残務整理と書けばOKで通っていた。
そのうち出勤簿は課長席横から、出入口横の袖机に何故だか信楽焼きの狸と一緒にポンと置かれるようになった。

夜になると信楽狸が課長に変身して、出勤簿に目を通しポンポコと承認印を押している。
ファンタジー
公開:20/04/28 18:55
更新:20/04/29 08:53

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