おみやげ
4
5
繭子が今落ち着かないのは、あと少しもすればこの屋敷に、総一が立ち寄る予定になっているからだ。
彼は仕事で旅立つ前にいつも、お土産に欲しいものはないかと尋ねる。
「あの、そ、総一様が良いと思った茶葉を」
俯きながら遠慮がちに、いつもと同じ答えを彼女は返した。旅立つ彼の後ろ姿を見送ったのは、もう三ヶ月も前だ。
屋敷の扉が開く音がすると同時に、繭子は駆け出す。子供のような振る舞いが恥ずかしい事だとは重々承知していたが、いつも同じことを繰り返してしまうのだ。
「総一様!ご無事のお戻り、何よりでございます」
「やぁ、繭子さん。ありがとう、お土産をお持ちしましたよ」
嬉しそうにそれを受け取り礼を言った後、繭子は少し沈黙して頬を染める。
「総一様、あの、私、お茶をお淹れします。ぜひご一緒に……」
この可愛らしい婚約者からの、精一杯の招待を受ける為に、彼が旅先で必死に茶葉を探している事を繭子は知らない。
彼は仕事で旅立つ前にいつも、お土産に欲しいものはないかと尋ねる。
「あの、そ、総一様が良いと思った茶葉を」
俯きながら遠慮がちに、いつもと同じ答えを彼女は返した。旅立つ彼の後ろ姿を見送ったのは、もう三ヶ月も前だ。
屋敷の扉が開く音がすると同時に、繭子は駆け出す。子供のような振る舞いが恥ずかしい事だとは重々承知していたが、いつも同じことを繰り返してしまうのだ。
「総一様!ご無事のお戻り、何よりでございます」
「やぁ、繭子さん。ありがとう、お土産をお持ちしましたよ」
嬉しそうにそれを受け取り礼を言った後、繭子は少し沈黙して頬を染める。
「総一様、あの、私、お茶をお淹れします。ぜひご一緒に……」
この可愛らしい婚約者からの、精一杯の招待を受ける為に、彼が旅先で必死に茶葉を探している事を繭子は知らない。
恋愛
公開:20/04/29 01:15
更新:20/04/29 01:21
更新:20/04/29 01:21
ずいぶん昔に
みじかいお話を書いていました。
人生の曲がり角には、文章を紡ぎたいという欲望にぶつかるようです。
わたしの欲望を果たすためだけの、
自分勝手な自分都合のお話が並ぶかと思います。
温かい目で見て頂けますと幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます