フォーマルハウト

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忘れられない女の子がいる。クラスが一緒だった。僕が筆箱の中身を床に落としてしまったとき、すぐに気が付いて拾ってくれる、そんな子だ。
彼女は人づきあいがうまかった。派手な見た目でも、地味な感じでもなく、クラスのヒエラルキーとか、女子特有のグループとかそんなものを越えて、みんなと等しく仲が良かった。
つまりは、僕と彼女の間にもそれといった深い付き合いがなく、彼女にとってぼくはただのクラスメイトに過ぎなかった。高校を卒業して、東京の大学に進学してしまった彼女とも会わなくなった。
そんな日のことだった。帰省中だったのだろう。東京に行って化粧をして、しかし相変わらず綺麗で素敵な彼女に会った。一目で彼女だと分かったが、話しかけられるほど親しくはなかった。夕暮れに小さくなっていく彼女を、僕はただ見ていた。

夕暮れの中に佇むフォーマルハウト前より少し綺麗になったね

現代に和歌があったならよかったのに。
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公開:20/04/27 20:24
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