妻を愛す

「アイスでも食べようか」


夜の22時。娘のサキは夢の中。
久しぶりだ。妻とアイス。

今日は色々話したい。
久しぶりだな。こんな気持ち。
僕の心を読んだかのように妻が言う。


「久しぶりだね、一緒にアイス食べるの」

最高に幸せなシチュエーション、
なはずだった。

「わたしさ、泣きながらチョコレートアイス食べて決めてたの」
妻は続けた。

「夜泣きで眠れなくて。
化粧なんかできずぼろぼろで。
義母さんには嫌味いわれて。
でも、助けてって言ったら
仕事だからしょうがないだろってお決まりのセリフでおまけに浮気ですか。

だからアイスの棒で、寝てるあなたの目をつき刺したの。実はあなたの左目は、あなたの目じゃないの。

決めたんだ。わたしが幸せだって自分で思えたらアイス食べて別れようって。

妻と最後のアイス… 妻を愛すことはもう許されない。僕の左目からチョコレート色の涙が出た。