覗く子

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 空に、巨大な赤ん坊の生首が浮いている。
 我々は彼のことを「覗く子」と呼んでいる。
 覗く子は昼の間、この世界を見つめている。たまにあくびをすると強風が吹き、看板や植木鉢が吹っ飛ぶ。
 そして眠る。
 すると世界は見られていないのをいいことに好き勝手に暴れ始める。
 秩序は崩壊する。
 街中にはゾンビが溢れ出し、怪獣が出現し、チェーンソーを唸らせた殺人鬼が徘徊する。夜空には巨大な宇宙船が飛来して、怪獣に向かってビームを放つ。魔法陣が出現し、巨大ロボットが歌い出す。
 覗く子が目を覚ますと、秩序が戻ってくる。全部元通り。それまで我々は、ぐちゃぐちゃの世界で生き延びねばならない。
 けど、もう終わりだ。
 目の前には大口を開けた肉塊。5秒後に私は死ぬ。目を閉じると、頭蓋骨が削られる感覚と激痛。叫ぶがどうにもならない。
 全身を襲う寒さに、私は安堵を感じた。
ホラー
公開:20/04/27 19:30

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