すごいキス

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 キスはもちろん初めてじゃなかった。彼が隣に座った瞬間から、そうなると予感していた。
「お互いを知るのに言葉はいらないよね」なんて科白に、「そうだよね」って普通に相槌を打つ私がいた。
 ホテルの部屋に入ってすぐ、彼は、私に覆いかぶさるように抱きしめてきた。私は大きくのけぞらされ、苦しくなって口を開いた。そこへ彼の唇が真上から私の唇へ重なった。
 私の口のなかを、彼の舌先が小さな円を描くようにくすぐった。舌はフサフサと柔らかに私の歯列を丹念になぞり、親知らずを越えて喉の付近にまで入り込んできた。
 彼の舌は沢山の手がついたストローみたいだった。私はなんだか不思議な気分になって、私の舌を彼の舌に絡めながら、彼の口の中をまさぐってみた。
 そこには、私の舌に触れるものは何もなかった。
 私は目を見開いた。彼はずっと私を見ていたようだった。
 彼の舌先は私の全てに触れ、私の舌は虚空にそよいでいた。
ホラー
公開:20/04/28 10:38
更新:20/04/28 11:28

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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