粉雪

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塾の窓から見えたのは粉雪だった。
「寒っ。早く帰ろうぜ」
勇人と並んでペダルを強く踏むと雪は頬を叩いた。
「優介。じゃ、またな!」
「おう。気をつけてな!」
別れてからは速度をグッと落とす。
あの子が追いつくまで、ゆっくりペダルを漕ぐ。粉雪はふんわり舞う。待ち合わせてる訳じゃない。人知れず勝手にしてるんだ。夜道を女子1人じゃ危険だし…
後ろからペダルの音が近づきあの子が追い抜く。そこから僕は少し後を見守りながらついていく。
あの子が自転車を降り、玄関のドアを開けるのを見届けて僕は通り過ぎる。高校入試までずっとそうしてた。

塾の最終日。もう最後の帰り道。
今日も粉雪が降ってる。
あの子が玄関のドアを開けた。でも今日は閉じない。
僕が通り過ぎる時
「優介くん。いつもありがと」
驚いた僕が振り返ると、あの子はもうドアの向こうだった。

粉雪は降り続いてる。
舞い降りた白い天使は僕の頬で溶けた。
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公開:20/04/28 17:00
更新:20/05/04 12:15

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

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