ソーシャル・ディスタンス・ダンス・パーティー 3.ソーシャル・ディスタンス編

もちろん料理にも妥協はしない。
あらかじめ配信しておいたメニューに従ってネットで注文すれば、最近街でよく見る四角いリュックを背負った自転車のバイトが、最寄りの特約店から自宅まで最速で料理を配達する。
店もバイトも稼げて言うことなしだ。
いかがでしょうか。完璧なソーシャルディスタンスを保ちつつ最高にゴージャスなオンライン飲み会、もといハイテク舞踏会は、まちがいなく今後のスタンダードとして広く世界中に浸透するものと私は確信しています。
いつもの調子でそう言ってみたものの、さすがにこれはないよな。俺は自分のいい加減さがつくづく嫌になったが、どうも様子が変である。
まさか真剣に検討してたりしないだろうなこの企画。
ないでしょこれ。
「この線で進めてみてくれないか。」お偉いさんが口を開いた。
本気か。俺はこの時になってはじめて現実の社会が直面している病巣の深さに気づき、戦慄した。
（おわり）