角（かく）家族

三角と四角は、病めるときも健やかなるときも、互いの角を愛し
内角の和を保って幸せになることを誓い、結婚した。

結婚して数年が経ち、子供の五角が生まれた。
決して裕福ではなかったが、三角と四角と五角は
せまい家の中で仲良く暮らしていた。

五角が成長するにつれて、家はどんどんせまくなってきた。
家の中でぶつかることも増えた。

お互いの角がぶつかり合うと痛い。
気をつけながら生活するのも限界があった。
「おい、そこどけよ親父」
「なんだその口のききかたは！」
親子喧嘩は毎日のように続いた。
ストレスのせいか、夫婦喧嘩も増えた。

そのたびに、どんどん角が増えて行った。
三角は三十三角になり
四角は四十四角になり
五角は五十五角になった。
その後も喧嘩のたびに角が増え続けた。

ところがある日、喧嘩がピタリとやんだ。
「最近、ぶつかっても痛くないな」
∞角形となった彼らは、円満に暮らした。