Ⅰ.012 壁にめり込んだ男~分析~

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 粒子が象る紙幣の列が、わたしの前に広がっている。
 東大陸には、金は天下の回りものという言葉があるそうだが、それはこの国でも同じだ。ヒトからヒトへと巡り渡る金は、情報の宝庫であり、事件関係者の足取りを追う手がかりにもなる。
 その分、得られるものも多いので、その精査には割と時間がかかるのだが、妙なことだった。
 眼前に並ぶ紙幣からは、ほぼひとつの匂いしか見出せなかったのだ。それも、直前に知ったばかりのもの。
 立場を考えれば、それがある事自体は不自然ではないが、それが不自然な程にありすぎる。
 そして、あるはずのものが、なかった。
「あるか?ニール」
「・・・」
 わたしは無言で答えた。
「そうか、ないか。発見者さん」
 間を置かず、主人が矛先を従業員に向けた。
「は、はい?」
「あんた嘘ついてるだろ」
 主人の言葉をきっかけに、デニさんの眼が完全に容疑者を睨むそれへと変貌した。
ファンタジー
公開:20/04/25 21:25
更新:21/03/11 20:35
ファンタジー 連載 探偵

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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