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わたしは、目を閉じ、口を一文字に結び、鼻腔から静かに息を吸い込んだ。
程なくして、瞼の裏に粒子の世界が広がった。わたしの犬としての嗅覚によって形成された匂いを根幹とする情報の世界だ。
その光景は、色彩形状の多様な粒が、ヒトやモノの造形を現す幻想的で捉え処のないもの、と他者なら思うかもしれない。
「相変わらずシュールな絵面だな」
「あ、あのぉ、このわんちゃんは」
この時、聴覚も鋭敏となり位置関係の補正に繋がっている。
左側の銀色の針状の粒影(りゅうえい)がデニさん。眼前にあるくすんだ萌木色が主人の影だ。
既知の情報から始まり、従業員の匂いークリーム色の綿状の影だ。ー行き来した警官の残り香。室内に漂う建材やワックス、アルコールに煙草と、漂う情報を精査してゆく。
「そろそろだ。静かに頼む」
頃合いを見計らい、主人が注意を促した。
恩に着る、主人。
では、始めよう。
程なくして、瞼の裏に粒子の世界が広がった。わたしの犬としての嗅覚によって形成された匂いを根幹とする情報の世界だ。
その光景は、色彩形状の多様な粒が、ヒトやモノの造形を現す幻想的で捉え処のないもの、と他者なら思うかもしれない。
「相変わらずシュールな絵面だな」
「あ、あのぉ、このわんちゃんは」
この時、聴覚も鋭敏となり位置関係の補正に繋がっている。
左側の銀色の針状の粒影(りゅうえい)がデニさん。眼前にあるくすんだ萌木色が主人の影だ。
既知の情報から始まり、従業員の匂いークリーム色の綿状の影だ。ー行き来した警官の残り香。室内に漂う建材やワックス、アルコールに煙草と、漂う情報を精査してゆく。
「そろそろだ。静かに頼む」
頃合いを見計らい、主人が注意を促した。
恩に着る、主人。
では、始めよう。
ファンタジー
公開:20/04/25 21:20
更新:20/07/06 21:21
更新:20/07/06 21:21
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連載
探偵
犬
まずは、こんにちは。
練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。
小説・脚本なども執筆してます。
【番号なし】 用語・設定解説
【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。
【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』
【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。
【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』
【001~】 短篇集『short TaleS』
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