絶望的な壁

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 かれこれこの壁を登り始めてから実に、10年になる。
 進歩した科学技術により、あらゆるものをリュックに詰められるようになった。壁さえ設置できる足場や、仮設トイレ、ガスコンロ、食料一式など。
「エベレストの山頂ですら一般客であふれかえっているというのに。日本でこんなに高い場所があったとは」
 物資の補充やごみの受け渡しもドローンやヘリで行うことができる。
「人類が達したことのない高みへ向かう。人類初、月面へ向かった宇宙飛行士の面々はこんな気持ちだったのだろうか」
 社会から隔絶されているものの、観測や通信を通して絶えず人とつながっているこの状況は、大昔の宇宙ステーションにも似ているかもしれない。
「そして人類は宇宙に進出した。ありとあらゆる困難を人類は乗り超えてきた。ならこの壁も!」
 夜路をあるいていると、急に先へ進めなくなるという怪異──妖怪『ぬりかべ』も乗り越えられるはずだ。
SF
公開:20/04/25 20:15
更新:20/04/28 15:47

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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