ヘンゼルとグレーテル

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ある時、[ヘンゼルとグレーテル]の映画が撮影された。監督はとにかくリアリティを追求した。
 この日の撮影が始まった。パンくずを木の幹につけながら、二人は進んでゆく。
 「暗くなってきたな。そろそろ家に帰らなければ。」
 しかし、パンくずは鳥たちが食べてしまっていた。
 「仕方ない。先へ進もう。」撮影はすこぶる順調に進んでいた。それこそ、今日でクランクアップするほどのペースで。しかし、どれだけ二人が歩き回っても、お菓子の家が見当たらない。
 「おかしいな。作っておいたお菓子の家はどこへ行ってしまったんだ。」 
 リアリティを追求した監督は、[本物]のお菓子の家なんて作るもんじゃないと心底後悔した。
 お菓子の家があるはずだったその場所では、たくさんの小鳥たちが綺麗な歌を歌っていた。
ファンタジー
公開:20/04/26 17:54

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