幸せ家族

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味噌汁の匂いで目が覚めた。トントントンと小気味よい包丁の音。小さな足音が駆けてきて、「パパ! 朝だよ!」の声と共に腹に重みが加わった。
「いてて。その起こし方はやめろって」
愛娘を抱き上げて、ぷくぷくの頬にキスをしながらリビングへ。
一児の母とは思えないほど若く美しい妻が俺達を見て微笑む。
「おはよ、早く食べちゃわないと遅刻するわよ」
ああ、なんて幸せな光景なんだろう。まるで絵に描いたような理想の家族──
と、この場にふさわしくない機械音が陽だまりを貫いた。卵焼きを食べようとあんぐり口を開けたままの俺を残して、妻と娘の笑顔がスッと消える。
「お時間です。二十四時間パックのご利用、ありがとうございました」
二人はそのまま狭い玄関へと向かって行く。
「あ、おじさん。キスはオプションだから料金上乗せしておきますね」
言葉と共にドアが閉まる。空っぽの椅子の前で三人分の朝食が虚しく湯気を立てていた。
その他
公開:20/04/26 15:33
隕石家族 ○○家族コンテスト

咲川音

小説を書いては新人賞に応募しています。

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