満ちる

病弱な妻とでは子が生せない。そこで私は他所の女と子を生す事にした。
妻とは家柄で結婚した間柄だ。血筋が何よりも大切な両家は私の行動を咎めなかった。
子を生す為に女を抱く。そんな時決まって私の耳に「あなた…あなた…」と妻の声がする。
最初は恐怖に怯えていたがそれは徐々に苛立ちに代わり、私は妻の声を耳にすると女を乱暴に抱いた。
結果から言えば他所の女とでも子は生せなかった。こうなると私に問題があるのではないかと両家は疑い始める。
しかも私と関係を持った女は皆、行方不明になっている。不可解な出来事に私は狂いそうだった。
ある時、やっと私の子に恵まれた女が一人いた。私は女を連れて家に戻った。
妻は女を見て笑った。「ああ、成った…」と。
女の目鼻口から花が咲いた。女の腹を裂き、果実の様な赤子が生まれる。
そんな狂気に満ちる空間で妻は赤子を抱くと私に「もっと種をばら撒いて頂戴」と告げ、部屋へと戻った。