ラッパ吹き
2
5
音痴のN君が大声で歌いながら歩いていると、男に声をかけられた。
「そこの君、ちょっとこっちに来てくれないか」
男は顔中に汗をかいていて、とても慌てた様子だった。
「知らない人についていっちゃダメって、お母さんに言われてるから」
良い子のN君はそう言って家に帰ろうとしたが、轟音がして立ち竦んだ。
彼の頭上に、軍のヘリコプターがあった。
運び込まれたN君は、男に連れ去った理由を尋ねた。
「物質にはそれ固有の振動がある。君が大声を出す時に発せられる音には、原子の固有振動が含まれていると分かった。君は黙示録のラッパ吹きだ。叫べば、原子は共振によって破壊され、世界は崩壊してしまう。だから、君は絶対に歌っちゃいけないよ」
それを聞いて、N君は大声で泣いた。
ほとんどの話を理解できなかったが、これから一生、歌を歌えないという事実に悲しくなったのだ。
こうして、世界は滅んだ。
「そこの君、ちょっとこっちに来てくれないか」
男は顔中に汗をかいていて、とても慌てた様子だった。
「知らない人についていっちゃダメって、お母さんに言われてるから」
良い子のN君はそう言って家に帰ろうとしたが、轟音がして立ち竦んだ。
彼の頭上に、軍のヘリコプターがあった。
運び込まれたN君は、男に連れ去った理由を尋ねた。
「物質にはそれ固有の振動がある。君が大声を出す時に発せられる音には、原子の固有振動が含まれていると分かった。君は黙示録のラッパ吹きだ。叫べば、原子は共振によって破壊され、世界は崩壊してしまう。だから、君は絶対に歌っちゃいけないよ」
それを聞いて、N君は大声で泣いた。
ほとんどの話を理解できなかったが、これから一生、歌を歌えないという事実に悲しくなったのだ。
こうして、世界は滅んだ。
SF
公開:20/04/24 17:43
ログインするとコメントを投稿できます