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父歯ブラシと母歯ブラシと子歯ブラシがいた。父歯ブラシは人間から歯を磨かれるのが嫌だった。汚いし傷んでしまうからだ。母歯ブラシは人間から歯を磨かれるのを喜んでいた。人間の歯が綺麗になるのなら傷んでも構わないと思っていた。子歯ブラシはまだ人間から一度も使われたことがなかった。子供がいない人間の家庭に買われたからだった。
「僕も人間の歯をみがきたいよ」子歯ブラシは言った。
「お前はなんて幸せなんだ。ずっと綺麗なままでいられるんだぞ」父歯ブラシは言った。
「かわいそうな坊や、人間の歯を綺麗にする喜びを味わえないなんて」母歯ブラシは言った。
子歯ブラシは自分が幸せなのか不幸なのかわからなくなって「ううん」と唸った。
そのころ人間の夫婦は食卓で話をしていた。
「子供が生まれるのは来月だよ。それに生まれてもまだ歯ブラシなんていらないだろう」
夫が言うと、妻は「いいのよ」と答えて笑っていた。
「僕も人間の歯をみがきたいよ」子歯ブラシは言った。
「お前はなんて幸せなんだ。ずっと綺麗なままでいられるんだぞ」父歯ブラシは言った。
「かわいそうな坊や、人間の歯を綺麗にする喜びを味わえないなんて」母歯ブラシは言った。
子歯ブラシは自分が幸せなのか不幸なのかわからなくなって「ううん」と唸った。
そのころ人間の夫婦は食卓で話をしていた。
「子供が生まれるのは来月だよ。それに生まれてもまだ歯ブラシなんていらないだろう」
夫が言うと、妻は「いいのよ」と答えて笑っていた。
SF
公開:20/04/24 09:52
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