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「手伝ってくれてありがとう」
「ううん。友達なら当たり前だよ」
嘘である。私は彼女と友達なんかではない。
先日、虐めっ子達に彼女の長い髪を切るように命じられた。そうしなければお前を虐めるぞ、と脅された。
だから、仕方ないんだ…
私はそっと彼女背後に回ると鋏を取り出し、その長い髪を、ちょきん、と切った。
地面に落ちるはずの髪の毛。
しかしそれはまるで生き物のように私の腕を伝い、首へと絡みついた。
首を締め上げられ、悲鳴を上げようにも声が出ない。声なき声で彼女に叫ぶ!お願いっ!助けてっ!

「それぐらいにしてあげて」

こちらに一瞥もくれない彼女の言葉に私を絞め付けていたものがシュルシュルと引いていく。

「オイタも程々にしないと、命を落とすわよ」

彼女は私にそう忠告すると元に戻る髪の毛に「ありがとう」なんて声をかけている。
髪の毛から『私達、長い友達でしょ。当たり前よ』と聞こえた気がした。
ホラー
公開:20/04/23 19:38
髪は長い友達

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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