海女美江ちゃん

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都内に住むぼくの小学校に不思議な女の子が転校してきた。
女の子の名前は『海女美江』と漢字で書いて「あまびえ」と読む。出身は東北地方の三陸海岸沿いにある鄙びた港町と自己紹介があった。
すぐにクラスメイトと打ち解けて仲良くなった海女美江ちゃんは、みんなから「あまちゃん」と言う愛称で呼ばれるようになった。
ある日、普段から面倒見の良い海女美江ちゃんが、クラスメイトに自分の似顔絵を描くよう鬼気迫る勢いで頼み込んできたので、ぼくもみんなも促されるように描くことにした。
その直後、新種の感染病が大流行したけれど、ぼくのクラスだけ誰も病気にかからず学級閉鎖も免れた。
海女美江ちゃんは、それを見届けるかのように次の小学校へと転校していった。
もしかして海女美江ちゃんは、江戸時代に光輝く姿で海中から現れ、自分を描いた絵を見てもらうことで疫病を払ったとされる半人半魚の妖怪、アマビエの末裔だったのかもしれない。
その他
公開:20/04/25 10:51
小学校 女の子 転校 海女 三陸海岸 あまちゃん 似顔絵 感染病 学級閉鎖 アマビエ

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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